2024年11月、インターグは東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場しました。
上場プロジェクトが始動してから上場まで、本当に大勢の方にお力添えいただきました。時間にすると1年8カ月で、有識者の方々いわくなかなかのスピード上場なのだそう。
せっかく機会なので、1年8カ月の上場プロジェクトの道のりを書こうと思います。TOKYO PRO Market(略称:TPM)を検討されている方々の何かの参考になれば幸いです。
2023年4月〜5月 定時株主総会・取締役会の準備
上場プロジェクトの最初の仕事は、定時株主総会・取締役会を事務局として遂行することです。上場を目指す企業として、しっかり形式に則った会議を実施しなければならないためです。
事務局の役割はざっくりと下記のような内容です。
- 株主総会
- 年に1回、定時株主総会を開催すること
- 株主総会招集通知を作成し、株主に案内すること
- 株主総会の台本と想定問答を用意すること
- 議事録を作成し、捺印を得ること
- 取締役会
- 月次で取締役会を開催すること
- 取締役会招集通知を作成し、役員に案内すること
- 議事録を作成し、捺印を得ること
上場企業の方からすると当たり前のことかもしれませんが、非上場企業は、この体制を1から作り定例化していくところから始まります。
2023年6月 定時株主総会
インターグの決算期は3月なので、前年度決算が締まる6月に定時株主総会を実施します。招集通知や台本を作って、株主総会らしい形式をとるのはインターグにとっては初めてでした。
一般市場(TPMのような投資家向け市場ではなく、個人も売買できる市場)では、AIを使ったり音楽ライブをしたりと個性豊かな株主総会が繰り広げられるそうですが、いつか私たちもインターグらしい株主総会を作れるといいなと思います。
2023年7月 規程・マニュアル・フローチャート作成
上場にあたっては、必要最低限の規程・マニュアル・フローチャート類をある程度の"作法"に則って定める必要があります。"作法"というのは、平たく言うと金融庁が定める内部統制の基準に沿うようにすることです。
会計監査やデューデリジェンスの際に外部の専門家の方々にも見ていただくことになるため、この"作法"に沿ったものでなければなりません。
当時、社内用のマニュアルはすでにNotionというツールの中で作られていたので、改めて規程やマニュアルを作成しなければならない点では負担に感じました。しかし、これは内部統制のため・外部の専門家の方々との共通言語を用意しておくためだったのですね。
2023年8月 予算実績管理の定着化
予実管理は上場の一番の要です。予算と実績との乖離は、売上高で10%、各利益(売上総利益、営業利益など)で30%までの乖離率にとどめるように管理していきます。乖離が大きい場合は、予算修正をするとともに、要因を明らかにしなければなりません。
予算よりも売上や利益が多すぎてもダメで、ただ数字を上げればいいわけではないというのが難しいところです。確度の高い予算を策定できること、根拠のある見通しを立てられることが大前提になります。
これまでは売上目標という形でしか計画を策定していなかったため、販管費も含めた全社での予算は初めて策定しました。過去の総勘定元帳から収益と費用を洗い出すから始めたのですが、こうしてみるとサブスクや手数料を見直すきっかけにもなり、無駄なコストを削減することにもつながりました。
2023年10月 社内勉強会
上場にあたって新しく定めた規程が沢山あったため、「今何をしているのか・何のためにやっているのか・何が制定されるのか」を社内に説明する機会を設けました。
規程は法律文のような独特な文書形式になるので、普段の業務ではなかなか触れないですし、存在すら知らなかったという人もいると思います。
しかし大事なルールは全て規程に定められているので、社内の全員に規程の存在や意味を理解してもらうためにも、直接説明する機会を作ることにしました。その意味で、全社説明会は重要なイベントだったのではないかと思います。
2024年4月〜6月 デューデリジェンス(DD)
「デューデリジェンス(DD)」とは、これから上場しようとする企業(=これから市場で投資を受けることになる企業)の価値やリスク等を調査することです。
上場を予定している企業は、投資家に向けて自社のそれらの情報を示すために、外部の専門家に報告書の作成を依頼します。
インターグはTPM上場にあたって、法務・財務・労務の各分野で専門家の方々に依頼しました。
調査にあたっては、資料を提出したりインタビューに応じたりするため、数ヶ月かかることもあります。そのため、J-Adviser(一般市場でいう主幹事証券のような存在で、東証と会社との取り次ぎをする)とスケジュールをこまめに確認しながら、報告書が必要な時期に間に合うように進めていきます。
2024年7〜9月 提出資料作成・意向表明・IRページ制作
提出資料作成
上場予定の約4ヶ月前頃から、いよいよ東京証券取引所に提出する書類を本格的に作り始めます。書類は大きく分けて2種類あります。
- 上場審査のための資料
:上場できる企業かどうか、証券取引所に審査してもらうための資料。対外公表はせず、証券取引所に提出するのみ。
- 上場時に対外公表する資料
:発行者情報、コーポレートガバナンス報告書など、証券取引所のWebページで公開されるもの。発行者情報は有価証券報告書のようなもので、TPMのような特定投資家向け市場の場合に「発行者情報」と呼ぶ。
会社の事業内容や展望、決算状況、組織体制など、投資判断に用いられる情報を記載します。
経営分析や会社全体の戦略立案はこれまで経営陣のみで行っていましたが、このように対外的に示す資料を作成することで、経営陣だけでなく各部門の意見を採り入れるきっかけになりましたし、社員も会社の状況を俯瞰する材料になったと思います。
作成にあたっては、J-Adviserや顧問弁護士・税理士の方など、多くの方のご助言をいただきながら進行しましたが、なにしろボリュームが多いのでなかなか骨の折れる作業でした。
上場意向表明
ひととおり資料が揃ったら、J-Adviserから証券取引所に上場意向表明書を提出してもらいます。
この日が過ぎると実際の審査が始まるので、ひとつの区切りでもあり、背筋が伸びる気持ちでした。
IRページ制作
投資家向けの情報を掲載するIRページは、上場申請日に公開できるように準備を進めます。
IRページは、専門の制作会社に依頼して制作するケースがほとんどです。証券取引所のシステムと連携して、自社のIR情報を表示するような独自の構築をする必要があるためです。
当方調べでは、主にこちらの3社が手掛けているようです。
2024年10月 上場審査・上場申請・セレモニーの準備
上場審査・上場申請
いよいよ証券取引所による審査が始まります。TPMの場合は、東証と上場予定企業との間で直接連絡を取ることはなく、東証とJ-Adviserとの間で審査に関するヒアリングが行われます。
ヒアリングの中でいくつか質問を受けるので、タイムリーにJ-Adviserあてに回答することが求められます。入念に審査資料を作ったつもりでも、ビジネスモデルを伝わりやすく説明できているか、変なミスはないか…などいつまでも心配な日が続きました(笑)
ある程度審査が進んだタイミングで、上場申請というステップがあります。「上場することを申請します」と対外公表する日です。IRページもこの日に公開することになります。
セレモニーの準備
承認されるかドキドキの中ではありますが、無事に予定通り上場できた場合に備えて、上場セレモニーの準備もこの頃に始めました。主に準備したのは以下です。
- 当日の服装(オリジナルTシャツ&パーカーを作りました)
- 会社ロゴパネルの発注
- カメラマンの依頼
- 当日の移動スケジュール作成
- メディアへの投げ込み資料作成
2024年11月 上場
上場予定日の1週間前に、正式に上場承認がおります。ヒヤヒヤと心配していた日々がようやく終わりを告げます(笑)
15:30頃に東証のWebサイト上で「新規上場の承認」というお知らせが掲載されるのですが、掲載されたことをオフィスで確認し、「よかった〜!」とその場にいたメンバーでひと安心したのを覚えています。
ちなみに、翌日の日経新聞にも上場承認銘柄として掲載されます。
そして上場日、11月20日を迎えました。
当日の流れは、後編ブログへ続きます!